一昔前は、敷地の境界線などには屈強なブロック塀が置かれることが多かったのですが、最近はおしゃれなフェンスを塀の代わりにしている住宅をたくさん見かけるようになりました。ブロック塀よりは解体する際の作業も軽そうで簡単に思えますが、自分で行うのは少々ハードルが高めのものもあるかもしれません。
今回は、解体業者に頼らずに自力でフェンスを解体する際の注意点を見ていきましょう。
フェンスの種類
アルミフェンス
錆びにくく、加工が簡単なので直線的ながらも個性的なデザインのものが多いのが特徴です。かつ安価であるため、住宅では採用されることの多いフェンスとなっています。弱点は若干耐久性に劣ることで、衝撃で変形しやすい点です。
ブロック塀の上などに設置されているようなデザインもよく見かけますね。解体は、比較的しやすい素材です。
スチールフェンス
アルミ製より丈夫で耐久性が高く、フェンスの中ではもっとも安価、ただし錆びやすいのが弱点です。こちらもブロック塀の上に設置され、メッシュ状になっているものをよく見かけるでしょう。
公園などでは直接地面に設置され、金網状のものが多くなっています。
木製フェンス
木のぬくもりを感じられ、やさしいデザインも多いため、おしゃれに活用することができますが、なんといっても耐久性が非常に低いところが難点です。
ハードウッド製であれば汚れを落としながら比較的長くはもたせられますが、ソフトウッド製だと1~2年に1回は保護塗料を塗らなければ腐ってしまうのです。
こまめにメンテナンスができる・手入れが好きという人向けであり、人を選ぶ材質だといえます。
樹脂フェンス
見た目は木製フェンスによく似ているので、ナチュラルな雰囲気を出すことができる一方で、実際には樹脂でできているため、アルミフェンスなどと比べればそこまで高くはありませんが、木製フェンスよりも耐久性は高くなります。
解体は、デザインによっては時間がかかることがあります。
鋳物フェンス
アルミなどの金属を鋳型に流し込んで成形するフェンスです。洋風でおしゃれ、アンティークなデザインのものが多い一方で、成形に時間がかかるため大量生産ができず、その分高価であるのが難点です。
解体時も、重量があることで作業に時間がかかります。
解体した方がいいフェンスとは
明らかに老朽化している
フェンスが傾いている・錆びている・基礎やブロック塀部分にひびが入っているなど、明らかに老朽化のしるしが見える場合には解体を考えるべきです。
目隠しや防犯の役割を果たせていないだけでなく、耐久性が著しく低下し、倒壊寸前の状態とも考えられるからです。
通常、自然災害で倒壊したフェンスや塀が、人やものに被害をもたらしたときに、所有者が罰せられることはありません。しかし明らかな老朽化を放置していて、そこに自然災害が来て倒壊した場合は、所有者の責任が問われることもあるのです。
設置してから年数が経っている
フェンスの素材によって耐久年数には差がありますが、老朽化の著しい傾向が外見上目立たないにしても、20~30年に1度は交換・撤去を検討した方がいいでしょう。
また前述したように、他と比べて大幅に耐久力の低い木製フェンスに関しては、1~2年ごとに塗料を塗りながらしっかり様子を見ておきましょう。
必要な工具
フェンスの解体は難易度が低そうに見えますが、基礎部分の解体や支柱とフェンスを引き離す作業には専用の工具が必要だということもあり、思うほどに簡単なものではありません。
また、ブロック塀の上にフェンスが設置されているタイプだと、重量もあるためケガのリスクはさらに上がるでしょう。
きちんとした工具はもちろん、身を守る装備も忘れずに用意しておきましょう。
・作業着
・皮手袋
・安全靴
・ディスクグラインダー
・ダイヤモンドカッター(刃)
・石頭ハンマー
・養生
石頭ハンマーや養生は、ブロック塀の上にフェンスが設置されているものの、ブロック塀部分を壊すために用います。
フェンス解体の流れ
フェンスの所有権を確認する
フェンスの役割のひとつに「敷地の境界線」というものがあります。隣家との境界がわかるようにフェンスを設置している場合、自分と隣家と、どちらに所有権があるのか明確でないケースが出てきます。
自分の敷地内にフェンスがあるのだから、間違いなくうちのものだろう…と思って解体してしまって、あとから隣家とトラブルになるという恐れもあるのです。
解体してしまってからでは手遅れなので、どんなに確信があってもまずは隣家に確認することから始めましょう。
古いフェンスであれば、造ったときの事情をすっかり忘れてしまっていることも考えられます。思い込みで行動せず、慎重に確認しながら進めましょう。
近隣挨拶
フェンスの解体は、家屋などの解体に比べれば小規模であり短時間で終わるものでしょうが、それでも騒音や粉じんの飛散は少なからずあるものです。ご近所には事情を話し、あらかじめ迷惑をかける旨を挨拶しておくと安心です。
前述したフェンスの所有権の件、境界線の件でも、近隣挨拶の際にもしかしたら意外な事実が発覚する可能性も考えられますよね。
一言声をかけるだけでも、その後の人間関係を良好に保つことにつながります。大きな工事でもないし…と思わず、しっかり済ませておきましょう。
基礎部分を掘り起こす
最初に取り掛かるのは、フェンス本体を切り取るとか剥がす、ということではない点に注意が必要です。
まずは、フェンスの下にブロックがある場合はブロックの基礎部分を、直でフェンスがある場合はその基礎部分を、掘り起こすところから始めます。
自分で解体を行う場合は、この流れをしっかり押さえておきましょう。
本体を基礎から抜き取る
本体は、「フェンス+支柱」の状態になっており、基礎に刺さっているのは支柱部分です。まずこの支柱部分を基礎から抜き取り、それから支柱とフェンスを引き離します。
非常に強力に接着されていることが多いため、専門の工具を使ってあわてず慎重に行いましょう。ケガの多い工程でもあります。
廃棄物の処分
ブロック塀部分・基礎部分から出たコンクリートガラ、フェンス本体の素材といったものをしっかりと分別し、処分の準備をします。
これらは一般ゴミとしては処理できないため、産業廃棄物を扱える業者に処分を頼むことになります。いいかげんな処分は絶対にやめましょうね。
まとめ
・フェンスにはアルミ製・スチール製・木製・樹脂製・鋳物製といったものがあり、それぞれにメリットと弱点がある。木製以外は30年をめどに交換・解体を検討するべきである
・傾いている・ひびが入っているというような、明らかな老朽化現象が見られる場合は、30年といわずすぐに解体を検討するべき
・実際に解体する前には、フェンスの所有権が自分にあるのか隣家にあるのか、しっかり確認してから工事に着手する。のちのちのトラブル防止のためにも忘れずに
・フェンス解体の際には、いきなり本体に手をつけるのではなく、基礎部分を掘り起こすことから始める。その後支柱ごとフェンスを基礎から外し、最後に支柱とフェンスを引きはがす
家屋はもちろん、プレハブやブロック塀といったものよりもさらに解体の難易度が低そうに見えるフェンスですが、実際には専門の工具が必要な作業もあったりするため、油断は禁物です。 もし少しでも無理を感じたら、すぐに業者にまかせることも視野に入れてお